毎年、12月になると思い出すことがあります。
今から30年数年ほど前の記憶。
まさしく危機一髪という状況を経験しました。
昭和63年秋。
半年間の語学研修を終え、私は米国リバサイド市に派遣されました。
数か月経って、現地での生活にもずい分慣れてきました。
ホームステイ先の近くのショッピングプラザへ買い物に出かけた時のことです。
雑貨屋さんの店内を回り、お目当ての品が見つからず、ほどなくお店を出ました。すると!
お店の回りを10台くらいのパトカーが円形に取り囲み、警察官が車の陰に隠れて拳銃を構えているではありませんか。
入店前は、全くお巡りさんの姿はなかったのに…
(これは米国のドッキリカメラなのか??)
と一瞬考えたくらいです。
ですが、私が動こうとすると、警察官が「×××!」と叫ぶ。「動くな!」と言われているみたいです。
どうやら、私自身が犯人扱いされている感じ。
警官の命ずるまま、両手を上げて、頭の後ろに組み合わせて…
口の中はカラカラ。
しかし、1、2分経過すると警察官の皆さんは、「ハイ解散!」とばかりに突然撤収を始めたではありませんか!
さすがに腹が立ったので、警察官の一人をつかまえて説明を求めました。
“You were doubted as a robbery.”
その一言だけを告げて、警察官は立ち去りました。
(ラバリーって何だぁ?)
と首をかしげつつ、車に乗り込もうとすると、近くにいたお爺さんが、
「お前は悪い時に悪い場所にいただけだから、気にするな」
と慰めるように、語りかけてきました。
ホームステイ先に帰宅すると、早速、お父さんが声をかけてきました。
「顔色が悪いぞ。どうしたんだ?」
“I was targeted by Police.”
「何だって?」
2回ほど同じやり取りが繰り返され、ようやく状況を飲み込めたお父さんは、血相を変えてそのお店へ突撃。
しばらくして戻ってきたお父さんの説明は次のようなものでした。
お店には、強盗に襲われた時に通報するボタンが取り付けられている。
ボタンを押すと警察に通報が行く仕組みだが、そのボタンが誤作動した。
警察が配備を敷いた後、最初にお店を出た人間がたまたま私だった…
後で辞書を調べてみると、robberyは強盗の意味。
×××との叫びは、Freeze! だったのでしょうね。
あの時、あと一歩でも動いていたら、間違いなく私は蜂の巣にされていたことでしょう。
いやいや、危ないところでした。