お寿司を握るための手数は一般的には7手。漫画だと「石塔返し」という究極の1手握りも登場します。人の手がネタに触れている時間が短いほどよい、との考え方ですね。
では、「仕事の手数」は?
例えば、復命書の作成。
用務の経過や出張先での聞き取り内容など、詳細にたくさん書くほどよい復命書である。
若い頃は、そのように信じて疑いませんでした。
ですが、「仕事の合格点」を考えるようになってからは宗旨替え。
復命に必要な最低限の事柄だけを記載するようにし、軽易な案件は口頭での復命に代えるようにしました。
打合せの報告書なども同様です。
さすがに私はやりませんでしたが、テープ起こしして克明に記録を作成するケースをたまに見かけます。
しかし、30分の打合せの中で真に活字にして記録に残すべき情報は、多くてもせいぜい10分くらい。要となる情報だと、数分程度だと思います。
話し言葉をそのまま活字にすると冗長ですし、場合によっては、言葉が独り歩きするリスクすら招きかねません。
自分の理解した内容を頭の中で整理して最小限の言葉で記録する。
この方が、仕事の質としてはずっと上等だと思います。
「仕事の手数は必要最低限に」
このことであります。
一方、かけるべき手数はしっかりとかけるべきです。
議会の議事録や裁判の記録などはテープ起こしして一言一句違わずに記録しなければなりません。
Excelで自動計算した補助金の算定額を念のため手計算で検算することも必要です。
仕事の質の向上に向けては、最小限の手数を志向しつつも、
「仕事のひと手間を惜しまない」
まさに、このことでありましょう。
おやじネタについてのささやかな解説
【石塔返し】
とは「きららの仕事」という鮨漫画に登場する必殺技。
ネタと酢飯を合わせるや垂直に振り下ろし、スパン!と1手で握ってしまうのです。
現実世界で私が承知する最速握りの使い手は、福岡の吉冨寿しの親方でしょうか。
全国津々浦々食べ歩きましたが、握りの速度はナンバーワンでした。
素人目にはキュキュッ!と2手で握っているように見えましたね。