大川原化工機えん罪事件における警視庁の検証結果報告書ですが、自治体の仕事においても「他山の石」とすべきポイントが多々含まれています。
【課長が管理職としての役割を果たしていない】
今回のえん罪事件の「主役」は外事一課の管理官と係長の2人ですが、報告書を読むと、直属の上司である外事一課長がほとんど何も指示を出していない様子が見て取れます。
報告書では「実質的な捜査指揮の不存在」とありますが、厳しく申せば、管理職としての役割放棄に等しいと感じました。
「ちゃんとやっとけよー」「後は頼んだぞー」
こういった部下への声がけほど無責任な態度はあるまい、と思っています。
この事案では、こうした声がけすら無かったのかもしれません。
「部下の仕事をきちんと確認・掌握する。」
課長職にある方の重要な役割です。
【幹部職員が下からの報告待ちとなっていた】
報告書には、
「当時の複数の捜査員が、担当管理官及び第五係長は、捜査上の消極要素に十分注意を払っておらず、外事第一課長以上の幹部に対して都合の悪い情報が報告されていなかったのではないかと推測される。」
とあります。
極めて重大な位置づけの事件なのですから、公安部長を始めとする「四役」は、能動的に情報収集に努めるべきでした。
「いやー、なかなか下から報告が上がって来なくてさー」
局区長さん達のボヤキを現役時代に何度か耳にしました。
私は、その度に(それは違うのだがな…)と心の中で呟きます。
報告を上げない部下が悪いのではなく、情報を取りに行かない幹部職員の姿勢こそが問題なのです。
【身内の論理で重大性が矮小化されている】
一番罪深いのはこの点です。
報告書には次のような記載があります。
「一連の訴訟の過程では、当時捜査に従事した捜査員3名が、第五係長による本件の捜査班運営を強く批判する証言をした。具体的には「(事件をでっち上げたと言われても否めないのではないかと問われ、)まあ、ねつ造ですね。」、「捜査幹部がマイナス証拠を取り上げない姿勢であった。」、「立件するに至ったのは、個人的な欲、動機からそうなったと考える。」、「(立件しなければならなかった理由はと問われ、)組織としては、ない。」と述べるなど、厳しい言葉によって非難した。」
つまり、この事件は、「主役」2人による「ねつ造」の疑いが極めて濃厚であり、報告書は、その点について厳しく検証しなければなりませんでした。
しかし、どうでしょう。調査報告書では、次のように総括されてしまっています。
「担当管理官及び第五係長による日々の捜査班の運営は、不十分なものであったと推察される。」
さすがにこれは違うのではないでしょうか?
「事件のねつ造」を「組織マネジメントの問題」にすり替えてしまっています。
過ちを過ちとして率直に認める。
不正な行為や事務処理のミスの再発防止を期する上で、一番大切なことです。
組織としての体裁にこだわっていては、真の再発防止など望むべくもありません。