ある自治体の職員が、地元企業などから預かったイベント協賛金を自分の口座などに保管し、懲戒処分を受けたとの記事を見つけました。
地元紙の報道によると”現金を持つより安全だと思った”のですって。
これは、埼玉県富士見市において開催された「富士見ふるさと祭り」に関して発生した事案。
このイベントは、市の商工会など17団体が実行委員会を組織して実施されるもの。
各方面から協賛金を募って費用を賄う形となっており、受付窓口が市の担当課となっています。
富士見市の記者発表資料によれば、
“当該職員は、最大で令和5年8月10日から10月13日の間に、市内事業者等から預かった富士見ふるさと祭り実行委員会への協賛金33件総額53万5,000円を、適正な事務処理を行わず保管していたとともに、適切な事務処理を怠った。10月13日までに当該職員が担当者に協賛金全額を3回に分けて渡しており、富士見ふるさと祭り実行委員会に金銭的被害は認められていない。”
とのこと。
察するに、この職員に悪意は無く、ご本人なりに「安全な方法」で現金を保管していた、ということなのでありましょう。
前例の確認とか、他山の石とすべき切り口は他にもありますが、今回は「公私の閾値パートⅢ」として考察します。
市民主体で構成された実行イベントに係る協賛金。
お金の最終的な出口は実行委員会事務局であり、一見すると「私」の領域の話に思えるかもしれません。
しかし、協賛金の受付窓口として案内されているのは、この自治体の担当課。
市役所の「看板」で勤務時間中に協賛金の受付をしているのですから、これは歴とした公務であります。
公会計を通さないものの、当該協賛金の取り扱いに「私」を介在させてはなりません。
この点、個人のクレジットカードを使用して不正にポイントを取得していた前回の事案と図式は全く同じです。
これらの事案における根幹の問題は、
「公私の区分がついていない」
ということ。
基本のキの部分であるだけに、状況は深刻だと私は感じます。
ある意味、釜石市の元職員が全住民約3万2千人分の個人情報を私的な理由で繰り返し不正に取得し、職場のパソコンのチャット機能を使用して、頻繁に「雑談」を交わすなどしていた、という恐るべき事案と相通じるところがあります。
ルール作りやマニュアルの徹底も大切でしょうけど、この問題への対応の方がよほど重要なのではあるまいか、などと感ずる次第です。
*参考文献
懲戒処分…イベント協賛金を自分の口座で管理していた課長 かばんや机にも保管 「口座に入れたのは現金を持つよりも安全だから。結果的にルーズだった」と語って依願退職. 埼玉新聞. 2024-02-16,埼玉新聞電子版, https://www.saitama-np.co.jp/articles/67460/postDetail, (参照2024-02-18)