新型コロナ対策の給付金を誤って一つの世帯に4630万円振り込んでしまった事案。
報道では「システム操作を誤ったため」との説明が多いのですが、腑に落ちませんでした。
金融機関や証券会社にあるような端末を操作するイメージしか浮かばなかったからです。
これでは、課長や係長のチェックが働きません。
丹念に報道を追っていくと…分かりましたよ!
これは、やはり「三角ディフェンス」の問題だったのです。
事案の状況を分かりやすく報じたのは日本経済新聞です。引用すると、
“誤って1世帯だけが記載された振込依頼書を金融機関に提出し、全世帯分がこの1世帯に振り込まれた。”
とあります。リンク(日経電子版)
つまり、「システム操作」と報じられているのは、振込依頼書などの会計処理を作成するシステムの操作であったことが推察されます。
対象世帯の名簿をフロッピーディスクで作成して金融機関に提出した、との別の報道もありますが、誤送金自体は上述の振込依頼書に基づくものでありましょう。
最終的には紙ベースの書類として処理されたのですから、課長、係長、担当者の3人による「三角ディフェンス」が可能だった事案です。
少し恨み節を申せば、明らかに不自然な振込依頼だと思うのです。
工事代金の支払いであればともかく、個人の方に4630万円も…というのですから。
オレオレ詐欺などが疑われるケースでは、各金融機関では念のための確認などを行っています。
本件も、事前に一報いただけていたら…と思いますが、振込終了後の指摘となりました。
もう1点、他山の石とすべきポイントがあります。
時間軸で事案の経過を見ていくと、振込処理が8日、その日のうちに金融機関の指摘がありました。
しかし、21日になって事態が急変!
この間の状況は、毎日新聞が伝えています。引用すると、
“当初、この世帯の申請者は返金の意思を示していたが、その後、連絡が取れなくなり”
とあります。リンク
つまり、何らかの形で一度は接触し、返金の意思表示を信じて待ち続けた…ということになるのでしょうか??
後出しジャンケンとのご批判を承知で申し上げますが、私なら、何が何でも接触出来た日のうちの返金を目指したでしょうけど。
併せて、金融機関に対して振り込んだお金の「凍結」を申し立てるなどのアクションも起こしたと思います。
仮に、弁護士と相談して「法律的にはどーたら」と難色を示されたとしても、自治体の意志として文書で金融機関に申し立てること自体は可能です。
「そのお金は誤って振り込んだものなので、預金者が返金に応ずるまで絶対に他の口座に動かさないでください。」
といった感じで強くお願いして流出リスクをヘッジします。
金融機関の社会的信用力を担保に保険をかける、ということです。
今回の事案は、公金支出における「三角ディフェンス」の大切さをまざまざと示しました。
「公金支出を実務的にチェックするのは担当者・係長・課長の3人だけ」
これを肝に銘じて、日々の業務にあたるが吉。
まさに、このことでありましょう。
*参考文献
コロナ給付金4630万円誤送金、回収できず 山口県阿武町.日本経済新聞.2022-04-22, 日本経済新聞電子版.https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE22CVQ0S2A420C2000000/, (参照 2022-04-24).
4630万円誤給付受けた申請者が返金拒否 「既に金動かした」.毎日新聞.2022-04-22, 毎日新聞デジタル.https://mainichi.jp/articles/20220422/k00/00m/040/248000c, (参照 2022-04-24).