読売新聞が東京地検特捜部の捜査対象者を取り違え、重大な誤報に至った事案に関する検証記事が一面に掲載されました。
「記者の思い込みが原因」との見出しが躍りましたが、果たしてそうでしょうか?
検証記事を読み進めていくと、そうではないな…と感じました。
「思い込み」は単なるきっかけに過ぎず、誤報掲載に至った真因は別のところにありました。
一つは、「基本的なルールからの逸脱」です。
複数の取材源から情報を得る、十分な確認が取れない場合は掲載しない、という鉄則に反する行動を取ってしまいました。
もう一つは「ホウレンソウの不徹底」です。
記者→キャップ→デスク→社会部長という階層がありましたが、部長への報告が後手に回り、その間、キャップとデスクによる誤った判断で取材が進められます。
掲載に至る土壇場では、議員による捜査の否定などのマイナス情報がありました。
それらは社会部長には共有されましたが、当日の編集責任者だった編集局当番デスクには知らされませんでした。
さらには、「社内ルールからの逸脱」がありました。
読売新聞は、過去にも重大な誤報があり、その時の教訓から、独自のチェック組織を設けており、記事掲載前に第三者的なチェックを受けるルールを設けていました。
しかし、キャップやデスクは特ダネの掲載を優先し、このチェックを受けていませんでした。
詰まるところ、この案件は、個人のミスを組織としてチェック出来なかった、というところがポイントなのです。
ですから、再発防止策は、いかに組織としてのチェックを機能させるか。
このことを具体に考える必要があります。
しかし、記事にあるのは、「記者教育の強化」や「記事掲載前のチェックの徹底」の二項目のみ。
まるで、どこかの自治体の再発防止策みたいです。
すみませんが、「〇〇の徹底」は「無為無策」と同義です。
「一事が万事」と言いますが、この事案に関しては、「一面が万事」。
まさに、このことでありましょう。
*参考文献
東京地検の捜査巡る誤報は記者の思い込みが原因、編集役員ら処分…池下議員の名誉回復へ取り組み. 読売新聞. 2025-08-30,読売新聞オンライン, https://www.yomiuri.co.jp/national/20250829-OYT1T50133/, (参照2025-09-04)
マイナス情報を軽視、チェック機能働かず…東京地検捜査巡る誤報検証. 読売新聞. 2025-08-30,読売新聞オンライン, https://www.yomiuri.co.jp/national/20250829-OYT1T50142/, (参照2025-09-07)