指定管理者制度の功罪

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写真提供:宮城県観光戦略課

高知県が5つの文化施設の指定管理者について、それまでの非公募から公募へ切り替える方針を発表し、論議を呼んでいます。

 

公募への切り替えが行われるのは、植物園や博物館、美術館など。

これに対する現場の反発は半端ないものがあります。

ある財団では、理事長名で知事に対する意見書を直ちに発出し、当該意見書を財団のHPで公開。

高知新聞の取材に対して、別の財団の理事長を務める県OBも疑問を呈します。

FNNプライムオンラインには、「使い捨て」との見出しが躍りました。

 

指定管理者制度は、平成15年の地方自治法改正により導入されました。

3年の移行期間ののち、平成18年9月に、直営施設を除く全ての公の施設について、指定管理者制度に移行したところです。

導入から20年以上が経過したので、そもそもどういう趣旨で設けられた仕組みなのか?

知らない方もおられるでしょうから、少しだけおさらいを…

 

時計の針を四半世紀ほど巻き戻します。

平成14年、2002年の7月。総合規制改革会議の中間とりまとめが公表されました。

中間とりまとめ公表時の首相は小泉純一郎氏。

いわゆる第1次小泉内閣の下でのお話でした。

 

郵政民営化などに代表されるように、この方の政策は「民間でできることは民間へ」というもの。

中間とりまとめも、この論調でまとめられています。

その中で一つ目玉的な位置づけにあったのが、「公の施設の受託管理者の拡大」でした。

つまり、この仕組みは「民活ありき」というものだったのです。

 

課長職時代にガス事業の民営化を手がけ、ものの見事に失敗しました。

仙台では都市ガス事業を市役所が営んでいるのです。

事業者公募において、株式会社の方々とお打ち合わせを何度もさせていただきまして、皮膚感覚で実感したことがあります。

 

官民協働などと言いますが、株式会社と自治体とでは行動原理が根本から異なります。

株式会社は株主の利益のために行動し、自治体は住民の福祉の増進のために行動する、ということです。

民間活力活用の本質は「同床異夢」であり、異なる行動原理の接点をいかにして見出していくか。ここにポイントがあるのだと思います。

 

指定管理者を公募とするか非公募とするかについて。

実は、自治体にその判断が任されている制度設計になっています。

一方、総務省の通知には「複数の申請者に事業計画書を提出させることが望ましい」といった一文もあり、原則公募をルール化している自治体もあります。

高知県の場合、「公の施設の指定管理者制度に関する運用指針」において、原則公募を打ち出しています。

 

しかし、指定管理者の公募はいいこと尽くしではありません。

現に、ある自治体では、複合文化施設の指定管理者を公募に切り替えた結果、東京に本社を置く大手の会社を構成員とするグループが指定され、当該自治体が出捐して設立した財団法人が解散に至ることとなりました。

この事案の場合、地元の方々にしか分からない複雑な背景があった様子ではありますが。

外形的には、それまで当該自治体の文化行政の一翼を担ってきた団体が消滅する、という結果になっています。

 

指定管理者制度は、使い方が肝心。

まさに、このことでありましょう。

 

*参考文献

反発、不安、戸惑い…「博物館は収益施設じゃない」「県のやり方は乱暴」職員や関係者の声は?高知県が県立施設指定管理を公募へ. 高知新聞. 2025-08-01,高知新聞PLUS, https://www.kochinews.co.jp/article/detail/893387, (参照2025-10-05)

 

『我々もただの使い捨て』5つの県立文化施設『公募』方針に波紋広がる 現場関係者が語る“不安”と“疑念”【高知】. FNN. 2025-09-26,FNNプライムオンライン, https://www.fnn.jp/articles/-/937280, (参照2025-10-05)

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