毒を食らわば in お詫びの流儀

なとり夏まつり 危機管理
写真提供:宮城県観光戦略課

大川原化工機えん罪事件に関する警視庁の検証結果が公表されましたが、不評です。

一体どこがよくなかったのでしょうか?

 

【第三者による調査としなかったこと】

一番の問題点は、ここにあると思います。

具体的には、

「検証チームは、副総監の下、警務部参事官を総括責任者、公安部参事官を副総括責任者とし、首席監察官以下人事第一課の監察部門を中心として、訟務課、公安総務課の職員を含む合計13名体制とした。」

というもので完全に「身内」で固められています。

「なお、警視庁は、東京都公安委員会に対し、検証チームによる検証の経過について随時説明し、同委員会における議論も踏まえつつ、本報告書をとりまとめた。」

などと検証結果報告書にはありますが、真に客観性を求めるのならば、第三者による調査に委ねるべきでした。

 

【再発防止策が具体的でないこと】

報道だけを読むと、「部長捜査会議」の導入、「公安捜査監督指導室」の設置、「多面観察」の実施など、いかにもそれらしい言葉が並びます。

こういう「形から入る進め方」は、実務的にほとんど機能しません。経験的にそう感じています。

その他、再発防止策として記載された項目は、こんな感じです。

 

捜査に関する相談・意見の受付け、警察署等からの質疑への対応の強化、通達の発出、教養・研修の充実(2回登場します)、公安・外事捜査員育成プログラム、他部門での長期派遣研修、捜査会議の活用、検察庁との連携、幹部の意識改革、部下が声を上げやすい職場環境づくり…

 

自治体における事務ミスの再発防止策とどっこいのレベルとしか映りません。

えん罪を生み、死者まで出しているというのに…

「反省事項は職員一人一人が深く胸に刻み」などとありますが、そうした美辞麗句で済ませる話ではないと思います。

 

【処分が大甘であること】

この事案に関しては、退職者を含む警視庁公安部の歴代の幹部らあわせて19人が処分、または処分相当とされました。

しかし、その内実は…

多くのものが訓戒や注意に止まり、捜査の中心を担い、私の感覚では最もギルティ度の高い、外事一課の管理官と係長の2人については、減給1か月の懲戒処分相当というもの。

 

さすがにこれにはOBからも「いかがなものか」という声が上がりました。リンク(毎日新聞デジタル) リンク(NHK NEWS WEB)

東京高等裁判所の判決では、捜査の違法性が認定され、その判決が確定しているのですから、違法な捜査を行った当時の職員は刑事罰を問われなければなりません。

 

あれもこれもそれも!

全ては、「身内による調査」としたことに起因しています。

「仕事の三原則」という私の仕事術があります。

大は小を兼ねる、過ぎたるは猶及ばざるが如し。そして、「毒を食らわば皿まで」。

本件は、「毒を食らわばの境地」でお詫びしようとしなかった。反省しようとしなかった。

そこに「話の根っこ」があると感じた次第です。

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