「クロスロード」をご存じですか?
阪神淡路大震災を経験した神戸市職員への聞き取りをベースに作成された、カードゲーム形式の防災教材なのだそうです。
私、恥ずかしながら存じ上げませんでした。
このカードゲームは、災害対応における「究極の二択」を問うもの。
一つのテーブルに5人が席に着き、「問題ゲーム」に対するYes-Noを各自が決定。
ゲームとしては多数派が勝ち、というルールですが、眼目は、Yes-Noそれぞれの理由をお披露目し、災害対応への理解を深めていく、という趣向です。
この問題ゲームが実にシビア。例えば…
“あなたは食糧担当の職員です。
被災から数時間。避難所には3000人が避難しているとの確かな情報が得られた。現時点で確保できた食糧は2000食。以降の見通しは、今のところなし。まず2000食を配る?“
これは、阪神淡路大震災で実際にあった状況を問題ゲームにしたもの。
もちろん、この手の話に正解はありません。
ある意味、全ての回答が正解であり、不正解でもあるのです。
二択…と目にして、拙著「虎の巻」に収録した「天秤思考」を想起しました。
何となく、災害対応においてもお役に立つような気がします。
私が「天秤思考」と呼ぶ仕事術は、
「二択の問いかけを繰り返すことにより、仕事の進め方を短時間で決定する」
というもの。
先程の問題ゲームに対しては…
Q1 不足する1000食の入荷見込みはあるか無いか?
A1 無い。
Q2 3000人に対する2000食の提供は意味があるか無いか?
A2 ある。
私だったら、この2つの問いかけで、不足する1000食の到着を待たずに手持ちの2000食を配給すると思います。
公平性の確保などは、副次的な問題だと考えるからです。
それでもなお逡巡があるのなら、さらなる問いかけを差し上げましょう。
Q3 当てのない1000食の追加を待ち続け、手持ちの2000食を腐らせてもよい。YesかNoか。
A3 No。
Q4 ①2000食を配給して公平性に関わるお叱りをいただく、②配給せず腐らせて避難者の命に関わるお叱りをいただく。①と②の双方を回避することは可能である。YesかNoか。
A4 No。
どちらか一つしか選択出来ない。そのような究極の状況であれば、私は②を回避します。
もちろん、①に関するお叱りは甘んじてお受けするつもりです。
大震災から13年。
「クロスロード・仙台編」を開発して、後世への発信を目論んでもよいのでは…などと感ずる次第です。