仕事を進めるにあたり、根拠となる法令の条文を確認したり、統計資料を参照したり、といったことは基本のキと思います。
最近、その究極版と申し上げてもよい本を読んだのでご紹介します。
それは、「なぜアジはフライでとんかつはカツか?」という電子書籍。
内容は、食いしん坊の私はともかく、興味の無い方々にとってはどうでもよい話ばかりですが、執筆に際しての文献調査が実に凄い。
そのアプローチはこんな感じ。
・明治〇年に出版された料理書に調理方法が載っている。
・昭和〇年発行の雑誌にこういう記事がある。
・明治〇年生まれの誰それが書いた随筆に、子どもの頃の記憶としてかくかくしかじかと書かれている。
・大正〇年の新聞に掲載された広告にメニューとして掲載されている。
何しろ、証拠となる文献が幾つも例示されていますから、ご主張にはいずれも説得力があります。
よくよく考えてみるとこれは凄いこと。
・明治時代や大正時代、昭和初期の関連書籍を探し出す。
・数多の随筆などの著作の中から「とんかつ」とか「カツレツ」などのキーワードに着目して該当箇所を押さえる。
・100年前の新聞を眺めてテーマに合致する記事や広告を探し出す。
こういった気の遠くなるような作業をしないことには本書は執筆し得ないのです。
実務において、本書と同様のアプローチをおススメする訳にはいきません。あまりに歩留まりが悪いと思います。
でも、きちんと根拠を押さえて論を立てる、ということ自体は素晴らしいことであり、一目置いて然るべきではないでしょうか。
事務処理のミスを減らしていくためにも、「文献主義」で根拠を毎回必ず確認する。
このことは大切だな、と改めて思いました。
*参考文献
近代食文化研究会「なぜアジはフライでとんかつはカツか?:カツレツ/とんかつ、フライ、コロッケ 揚げ物洋食の近代史Kindle版」(2022)Kindle