自治体の仕事は、前例踏襲が基本スタイルだと思っています。
四半世紀ほど前に、ある外郭団体に派遣された時、そうではない仕事のスタイルに接して仰天した記憶があります。
管理職に昇任させていただいた私は、ある外郭団体で課長としての仕事を仰せつかることになりました。
その外郭団体の仕事は、仙台市からの補助金や委託料を主たる原資としていますから、その使い方にも一定の公共性が求められてきます。
つまり、自治体の仕事と同様に前例踏襲が基本になる、ということです。
この場合の前例踏襲とは、それぞれの業務を実施する目的や必要性、妥当性などの考え方が一貫している、という意味合いで申し上げています。
毎年度実施する事業なのであれば、同じ考え方に基づいて企画され、実施される。
その基本に加えて、前年度での反省点や新たに生じた状況などを踏まえてブラッシュアップしていく。
これが、当時の(今もですが)私の認識でした。
外郭団体の課長として事業実施の起案文書をチェックしました。
立派な内容なのですが、事業の目的や必要性などの記述について念のため部下に尋ねてみました。
「これは、前年度の起案文書を確認してありますか?」
「いいえ、見ていません。自分で考えました。」
いやいや、これには驚きました。
「仙台市の税金を使って実施している事業なのだから…」
と前例踏襲の意義を説きますが…
「はぁ…」
とまるで手応えがありません。
さらに驚くべきことに、ほとんど全ての部下が同じように「前例不踏襲」のスタイルでありました。
まるで異世界に迷い込んだような気分になりましたが、私としても譲れない部分なので、前年度の起案文書を必ず確認するよう指示を出しました。
部下の中には不満を露わにする者もおり、
「今まで市役所から派遣された課長さんは、黙ってハンコを押すだけでした。」
との訴えも耳にしました。正直ですね。
つまり、こういう話なのです。
これまでこの外郭団体に派遣されてきた課長は、部下の仕事の進め方についてあまり口を出してこなかった。
なので、各人各様という独自の組織文化が育ってしまった、ということなのでしょう。
「今までの派遣職員の指導が適切でなかったので、それはご免さないと申し上げるけれども、仕事の進め方としては私の話しているやり方が正しいので従ってください。」
とお話ししました。
この点、部下の側にはかなり不満が残ったと思います。
今までは、自分の考えで伸び伸びと事業の企画立案が出来ていたのですから。
どうすればよかったのかな?
と時々思い返しますが、還暦を越えてもよい案は正直思い浮かびません。
今の私なら、もう少し妥協するかもしれないな、とは思いますけれど。