開示請求の「黒塗り」に関して、画期的な判決がありました。
これは6月3日に出た判決。
東京のNPO法人が、警察庁に対して個人情報が記載された公文書の開示請求を行ったところ、「名称」や「利用の目的」といった項目の名前以外、すべて黒塗りの状態で開示されたことを不服として、裁判で争っていたものです。
最高裁は、「開示請求を受けた行政文書は原則、公開されるべきで、項目の一部に不開示情報が含まれているからといって、一体的に不開示と判断すべきではない」と指摘。
「合理的な単位でより細かく区切って判断すべきだ」として、差し戻しの判決を下しました。
文書内の項目名については開示していたものの、備考欄に小項目があったのに一律に不開示としたことについて、二審では、国が詳細を明らかにしなかったため、開示できるかどうかの判断が出来ない、として不開示の決定を維持する判決を出しました。
これについて最高裁は、国に対して具体の内容を明らかにさせた上で、開示の可否の判断をすべきだった、として審理を差し戻したものです。
これは、情報公開の現場においては、かなりインパクトのある判決です。
あだち充のマンガに時々登場する、前頁真っ暗のような黒塗りはもはや許されません。
裁判になったら、黒塗りにどのような情報があり、どういった判断で不開示としたのか、合理的な説明が求められることとなりました。
かねて、公文書については「大リーグボール1号の精神で作成すべき」と申し上げてきました。
「巨人の星」という昭和を代表するスポ根漫画があります。
長嶋茂雄がまだ現役だった時代の作品で、ワンちゃんとともにチョーさんとして「出演」しています。
その巨人の星に登場し、日本国中の昭和小僧を夢中にさせた魔球。
それが「大リーグボール1号」なのであります。
主人公の星飛雄馬は、球質が軽いという投手としての致命傷から立ち直るべく、禅寺(ぜんでら)で座禅を組んで精神面の修行に励みます。
何度も警策(けいさく)で打たれる飛雄馬を和尚はこう諭します。
「打たれまいとするから打たれる。打たれてけっこう。いやもう一歩進んで打っていただこう。この気持ちが大切じゃ。」
この和尚の言葉に啓示を得た飛雄馬は、打者の構えたバットを狙って当てるという逆転の発想の魔球「大リーグボール1号」を開発するのです。
思うに、公文書作成の基本精神もこれと似たところがあるのではないでしょうか?
「開示を基本に据えて公文書を作成・管理する」
まさに、このことでありましょう。