シン・仮面ライダーを観ました。
脚本・監督を務めた庵野秀明氏の仕事を虎の巻の視点で考えてみました。
作品は、石ノ森章太郎の原作漫画のいくつかのエピソードなどに素材を得て、庵野氏のアイディアを加えたもの、と受け止めました。
純然たる子供番組であったテレビの仮面ライダーとは違って、原作コミックではショッカーという悪の秘密結社によって改造人間とされてしまった人間・本郷猛の苦悩が色濃く描かれています。
スクリーンに登場するシン・仮面ライダーは1970年代のテレビ番組そのままの(というか、その数倍カッコいい)姿なのですが、描かれる世界のベースは石ノ森の漫画版。
そんな感じの映画でした。
シン・ウルトラマンの時もそうでしたが、庵野氏の仕事は、過去の作品を完全に頭に入れた上で、自らのアイディアに基づくオリジナルストーリーの中で巧みに過去の作品の素材を使用していると思います。
リメークのようでリメークではなく、オリジナルのようでしっかり原典がある、という印象。
コレ、私たちの仕事においても大いにアリ!と思います。
他都市の取り組みや過去の施策を吸収しつつ、現在の状況を踏まえ、新たな政策として再構築というか再創生する。
重要な仕事のテクニックだと思うのです。
映画の一つのクライマックスのベースになるのは原作版の「13人の仮面ライダー編」。
自らと同等のスペックの悪の仮面ライダー12人を相手に本郷猛は苦戦。
原作では、円陣に囲まれ銃殺されてしまいます。
映画でも同様の場面が登場しますが、原作とは異なり、ここにあの「彼」が登場!
思うに、これは庵野氏の50年越しの願いだったのではないでしょうか。
原作では、本郷が銃殺された直後に「彼」が登場し、敵ライダーを一掃します。
あとほんの少し早く来てくれれば!
50年前の小僧達はそんな思いで歯噛みしたのでございます。
脳だけが生きている状態になった本郷と感覚をリンクした「彼」が、颯爽とバイクを走らせながら、
「これからはずっと一緒に戦うのだ」
と誓い合う場面で「13人の仮面ライダー編」は終わります。
映画のエンディングを眺めながらこのことを思い出し、不覚にも涙がこぼれてしまいましたー
【付け足し】
エンドロールでお馴染みの主題歌など3曲が流れます。
子門真人が新たにリテイクしたバージョンか??と一瞬思いましたが、音の歪み具合などから50年前の音源と判断。
字幕の最後の方で確認出来ました。当時は藤浩一名義で活動していたのです。
3曲目は知らない曲でしたが、紛れもなく子門真人の声。
手持ちの仮面ライダー主題歌集にも収録されていません。
「この曲知ってました?」という庵野氏のこだわりの声が聞こえたように思いましたー