かねてより、SDGsについては「よく分からない」と感じており、拙著でもそのことを素直に申し上げてまいりました。
最大の理由は、どの関連本も「SDGsとは何か」について語っていないから。
17の目標に関するテンプレート的な説明や内外における事例紹介といった本ばかり。
詰まるところ、「SDGsとはSDGsである」ということしか書かれていないのです。
しかし、今回手に取った一冊は違いました。
私の中のモヤモヤを吹き飛ばしてくれましたよ。
ご紹介するのは「カオスなSDGs グルっと回せばうんこ色」という新書。
地球物理学がご専門の酒井敏氏の著作です。
私、基本的には真面目な性格なので、「目標」とあると「達成」という言葉が思い浮かびます。
SDGs関連本に対する不満の一つには、どうやったら目標を達成出来るのか、誰が目標達成に至る工程を進捗管理するのか、などといったことが一切書かれていないこともありました。
前回考察した際には、
「カチッと」したものではなく、もう少し「ふわっと」したものと理解すればよいのですかね…
と呟きましたが、本書を読んで、まさにその通りなのだと思い至りました。
著者の言わんとするところを私の理解として申し上げれば、
・SDGsの掲げる17の目標はそれぞれ正しいことではあるが、同時に相反する部分もある。
・全ての目標を完璧に達成することはそもそも出来ない。
・SDGsはいわば社会に対するリミッターのような役割を担っているのであって、適度な距離感で相対するのがよい。
こんな感じでしょうか。
本書の主張が私の心にヒットする理由…
それは、「建前」ばかりの一連の関連本に対して、SDGsに関する「本音」を語っているところにあるのだと思います。
「これからはSDGsですよ!」
と多くの方々から聞かされ続けてはきたものの、上述のような理由で自分の中では未消化の部分が多かったのです。
「猫も杓子もSDGs」という構図には違和感を覚えていました。
最後に、私が一番印象に残ったところを引用します。
“資本主義の暴走に多少なりともブレーキをかければ、取り残される人をできるだけ少なくすることはできます。そのためには、SDGsでは世界のさまざまな問題を同じテーブルの上に載せて人々に自覚を促し、行動を変容させようとしている―そういうものだと思えば、いまの自分を犠牲にして、ただひたすらにゴールを目指す必要はありません。”
ここを読んで心から安堵いたしました。
*参考文献
酒井敏「カオスなSDGs グルっと回せばうんこ色」(2023)集英社