大阪府富田林市に本社を置く金剛バスの廃止について各紙が報じています。
これは、富田林市など4市町で同社が運行する全ての路線バス事業を令和5年12月をもって廃止する、というもの。
同社は2009年度から赤字となり、コロナ禍の影響もあり全路線が赤字となりました。
今年に入ってから、大阪府や4市町に対して運営補助金の交付を要望しましたが、自治体側に動きが無かったこともあり、今般の廃止方針表明に至ったものです。
バスや鉄道などの公共交通については、事業としての採算性の確保と公共交通機関としての使命の全うという悩ましい問題があります。
取り分けバス事業においては、福岡市など民間事業として経営が成り立っているケースが存在することもあり、公的な補助に対するハードルが高いようにも感じていました。
一方、そうは言っても、バス事業の会社が倒産して地域の足が無くなってしまう、という状況に万一至ったらどうするのだろう?
「公金投入と地域の足の確保」
という究極の二択を迫られた場合の答えは…
などと、個人的には考えてもおりました。
このテーマに関して参考になる、と感じたニュースがあります。
函館市の湯川団地という市営住宅にある「菊乃湯」の廃業に関するもの。
菊乃湯は同団地における唯一の銭湯であり、廃業に伴い「風呂難民」の発生が懸念されていました。
そこで、函館市はこの銭湯を買い取ってリニューアルし、市営の浴場として存続させることにしたのだそうです。
「究極の二択」においては、こうした形での公金投入もあり得る、ということを示す事例だと思います。
金剛バスの路線廃止方針を受けて、自治体側は近隣でバス事業を行っている近鉄バスと南海バスに対して、路線維持に向けた要請を行いました。
おそらく、何らかの形で路線は維持されるのでは、と予想しますが、相応の公金投入は避け難いのでは、とも感じます。
「たられば」の話ですが、金剛バスから補助金要請を受けた時点で、路線維持に向けて今後投じられるのと同程度の公費負担の腹を括れていれば、あるいは違った未来があったのかもしれません。
ちなみに、函館市がリニューアルする浴場の名称は、「市営住宅湯川団地共同浴場」となるのだそうですが、愛称として「菊乃湯」の名前を残し、看板もそのまま使用するのだそうです。
いい話だな、と思いました。新生・菊乃湯の開業は令和5年10月の予定です。
*参考文献
金剛バス廃止 2社に運行引き継ぎ要請…4市町村、近鉄・南海に. 読売新聞.2023-09-13,読売新聞オンライン, https://www.yomiuri.co.jp/local/osaka/news/20230912-OYTNT50184/, (参照2023-09-13).
「風呂難民」どう救済? 函館・湯川団地唯一の銭湯「菊乃湯」店主が9月引退 存続へ市が調整. 北海道新聞.2023-01-26,北海道新聞デジタル, https://www.hokkaido-np.co.jp/article/792303/, (参照2023-09-13).
函館・湯川団地の銭湯「菊乃湯」 10月17日リニューアル開業 市が買い取り継続. 北海道新聞.2023-09-12,北海道新聞デジタル, https://www.hokkaido-np.co.jp/article/907363/, (参照2023-09-13).