東京都練馬区において、職員のボーナスに係る源泉所得税の納付遅れに伴い、不納付加算税などが課された件について、担当課長にその全額の賠償を請求する、という事案が報じられました。
何だかなぁ…とあれこれ考えてみました。
ざっとおさらいすると、自治体職員が賠償責任を問われるのは、自治法の規定により、故意又は重大な過失により損害を与えた場合に限定されています。
一方、民間を含めた裁判例に関して、仙台市当局は市議会で次のように答弁しています。
「最高裁の判例では、従業員への賠償請求は、信義則上相当と認められる限度に限られるという原則を示しております。また、その後の裁判例の分析によりますと、従業員の過失の程度と負担割合の関係としましては、軽過失事案の場合はおよそ五%から三〇%、重過失事案の場合はおよそ五〇%から七〇%の範囲とされております。」
学校プールの水道栓の閉め忘れなどにより余分な水道代が発生した事例が、全国で相次いで発生しています。
報道をざっと俯瞰した印象だと、職員に対して半額を請求するケースが多くある一方、故意または重過失が認められないとして賠償請求をしない事例もありました。
「半額」とする根拠について明確に言及している事例は見つけられませんでしたが、先ほど引用した議会答弁のような裁判事例を考慮しての話なのかな、と感じます。
でも、50%の請求というのは重過失があった場合ですからね!
私が懸念するのは、こうした事例の積み重ねによって、根拠のない相場観が世の中に定着してしまうこと。
学校プールの水道代=半額弁償
みたいな一律の図式です。
ですから、練馬区の事案における自治体の対応についても、私は大いに疑問を感じます。
「全額請求」というのは、民間を含めての裁判例においても異例の話と映るからです。
もちろん、請求を受ける職員が保険に加入していて個人負担が実質的に発生しないから、などと安易な判断をしたのではないのでしょうけれど。
学校プールの事案でもこの事案でも、過失の軽重をしっかりと検討した上での判断であることを願うばかりです。