2023年1月に大阪湾に迷い込んで、そのまま死んでしまったマッコウクジラの「淀ちゃん」の処理費用が問題になっています。
私、最初は「手順前後の問題」かな、と思っていたのですが、少し違うようです。
この件が注目を集めるようになったのは、住民監査請求がきっかけでした。
大阪市の見積り額が約3700万円であったところ、その倍以上の8019万円で随意契約を結んでいることを疑問視したものです。
私、この時点では「手順が前後しただけ」と思っていました。
業者から参考見積を徴して積算しておれば、こうした問題は生じなかったであろうに、という感覚だったのです。
しかし、状況はなかなか奇怪でした。
各マスコミの報道で分かってきたのが、業者に言い値での契約を強く主張する経営企画課長(当時)の存在。
この人は、大阪市港湾局に所属してはいますが、淀ちゃんの処理に係る決裁ラインにいる訳ではありません。
つまり「横やり」を入れていた訳です。
最初は、海中投棄を決定した市長の意向を忖度したのかな…と思っていました。
その図式だと、「やり手」と映っていたのですが…
どうもそうではないようで…
淀ちゃんを処理した業者には、当時、大阪市OBが在籍しており、当該課長はこのOBと仲がよかった、ということが分かってきます。
契約の交渉期間中に会食をしていた、との報道もあり、この点、本人も認めているとのこと。
私の中では、ギルティ度がグンと上がりました。
しかし、それにしても分からないのが、そもそも何故海中投棄の方法を選択したのか?という根源的な問題。
クジラの処理については、水産庁のマニュアルがあり、「海洋沈下」は「最も困難が伴う」方法とされているのだそうです。
過去の事例の大半が「埋設」処分で、「海中投棄」を選択したケースは1件しか確認できない、とのことでもあります。
大阪市監査委員によると、大阪市港湾局は、令和5年1月17日の市長説明において、“埋設する場所がなかったことを理由に、「海洋沈下」の方法しかなかったこと、費用については精査中であることを説明した”とあります。
私、ここが本件のポイントのような気がするのです。
同じ日付での大阪市長のコメントがあります。
“海から来たクジラ君ですから、亡くなってしまったら海に帰してあげたい”
というもの。
市長説明と市長のコメントの前後関係で図式がまるで違ってくるなぁ…と感じました。
仮に、市長のコメントが港湾局による説明後であれば、
「事務方によるミスリード」とか「大阪万博への忖度」
などという図式が浮かんできます。
また、その逆であるならば、
「首長の意向に唯々諾々と事務方が従った」
という図式になりますかね。
いずれ、大阪市港湾局の対応がお粗末であったことは間違いありません。
「前例踏襲」
の基本さえ押さえておけば、決して陥ることの無かった落とし穴にまんまと嵌ってしまったのですから。
*参考文献
なぜクジラの「淀ちゃん」死体処理に8000万円? 維新と近い業者が受注 大阪市のテキトーな理由【内部文書入手】. AERA. 2024-05-18,アエラドット, https://dot.asahi.com/articles/-/222729?page=1, (参照2024-05-31)