宮城県と仙台市が導入を目指している「宿泊税」が苦戦しています。
先日の地元紙には、“総スカン”などの見出しが躍りました。
私、この件に関しては、ずっと不思議に思っていたことがあるのです。
それは、何故「増税」が必要であるかの根拠がきちんと示されていないこと。
例えば、防衛増税の議論を考えてみてください。
防衛力の増強のために〇兆円必要であり、そのうち△兆円分を××税で賄う必要がある、などといった調子で説明がされてきたではありませんか。
卵が先か鶏が先か、の議論で申せば、増税に関しては鶏が先なのです。
でも、これまでの議論にはそうした説明がありません。
「いや違いますよ。〇〇委員会に提出した資料の〇頁をご覧ください」
などと、あるいは強弁する方もおられるかもしれません。
あれこれ拝見させていただきましたが、綴られているのは抽象的な課題認識と定性的な表現での施策の方向性だけであります。
これを鶏とは市民は思いません。
だからこそ、今のような事態に陥っているのです。
本来、どうすべきであったか?
それは、観光誘客の戦略と達成目標を定め、それに必要な具体の施策パッケージを予め提示すること。
「こういう取り組みをやって、これだけ観光客を増やします。」
「そのためにはこれだけのお金が必要です。」
「ついては、そのうち〇億円分を宿泊税として…」
という一気通貫のストーリーでありましょう。
税金を取られて効果がいくらあるのかも分からない、というのでは、話を進めたくとも進めようがありません。
地元紙によると、今後、県は観光戦略プランを策定し、宿泊税を前提とする目標値を提示するとのこと。
手順が違います。
宿泊税の導入と観光戦略プランの策定は、セットで議論されるべきことだと個人的には思います。
とは言え、行政がこういう取り組みに〇億円投じたから観光客が〇万人増えた、という関係にあるのか、というと心許ない状況にはあるのです…
観光統計から相乗効果を推認出来るのは、絆まつりなど官製の大型イベントの開催によるもの。
それ以外となると、独眼竜政宗やデスティネーションキャンペーン、うみの杜水族館など、いわゆる「他力」由来のものばかりです。
キラーコンテンツの牛タンは「民力」の賜物であり、ジャズフェスもまた同様。
この件に関しては、「気持ちの問題」で語られることが多いのですが、増税の議論なのですから、増収によって得られる効果についての議論も深められていくとよいな、と外野は思っています。
*参考文献
宮城県「宿泊税」八方ふさがり 事業者総スカン、県議会与党会派も反発. 河北新報. 2024-07-08,河北新報オンライン, https://kahoku.news/articles/20240707khn000009.html, (参照2024-07-08)