後出しの他山

危機管理
写真提供:宮城県観光戦略課

「不都合な事実の後出し」がいかに社会的信用を低下させるか。

これまでは日大アメフト部の大麻事件が筆頭格にありましたが、新たな典型事例が現れました。

小林製薬の紅麹問題であります。

 

後出しの第一は、サプリ摂取との関連が疑われる死亡者数。

3月26日に1名と発表した3日後の29日には5名に増加。

しばらくこの数で通していましたが、6月28日になって突如76名へと大幅に増加します。

 

そもそも、この会社については、1月15日に健康被害の疑いのあることを把握していながら、製品の自主回収発表が3月22日となった対応の遅れへの批判がありました。

度重なる不誠実な対応に国も激怒。

「もう任せておけない」

という厚生労働大臣のコメントまで飛び出します。

 

止めとなったのが、7月23日に公表された事実関係検証委員会による報告書。

製造現場では青カビの付着を以前から認識していた事実が明らかになりました。

また、2月1日に医師から問い合わせがあった際にも、1月15日に症例報告があった事実を伝えていなかったことも発覚。

まさに「後出し」のオンパレードであります。

 

報告書が示していることは「当事者不在」。

会長や社長を含め、この問題に対して当事者意識を持って対応したと思われる人物が見当たりません。

「司令塔不在であったが故の後出し」という図式が浮かび上がります。

 

2020年に水虫飲み薬に睡眠導入剤が混入するという事案が発生しました。

業界的には前代未聞の出来事だったのだそうです。

この件でも「裏手順書」の存在についての後出しがあり、製造販売業者の信用低下に拍車をかけました。

結局、この事業者は医薬品の製造販売から撤退し、工場などの資産を譲渡するに至りました。

 

小林製薬は今後の業績予想を取り下げ、「未定」としていますが、経営への重大な影響が出ることは間違いないでしょう。

後出しのツケは大きいのであります。

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