虎穴

仕事術あれこれ

「教育委員会が本気出したらスゴかったーコロナ禍に2週間でオンライン授業を実現した熊本市の奇跡-」(佐藤明彦著)という本を読みました。

2017年度における教育用コンピュータ1台当たりの児童・生徒数の比較で熊本市は政令市中下から2番目。児童・生徒12人に対して1台の割合でしか端末がありませんでした。

それからわずか3年後の「奇跡」。

一体、何がポイントだったのでしょうか?

 

【方針が明確だった】

かつて熊本市は教育用CPの先進都市でした。しかし、CP更新の予算が付かない状況が数年続き、「どうせ来年もつかないだろう」との諦めムードが浸透。気がつけば下から2番目になっていたのです。

転機は、熊本市長が外部から起用した教育長の赴任でした。

市長との意見交換の中で実情を訴えましたが、それまで市長は下から2番目という実態を知らず、熊本は先進都市だと思い込んでいたのだそうです。

「3年間で指定都市ナンバーワンに」との意向がトップから示され、予算面での裏付けが得られたことが先ず大きかったと思います。

 

【ガバナンスが効いた】

市長の方針を受けて、端末の台数としては一定程度配備することが可能となりました。

しかし、熊本市の取り組みは運用面に特色がありました。

具体的には、

  • 教職員1人に1台端末を配備した
  • 児童・生徒用の端末を含めほとんど制限をかけなかった
  • 自宅や家庭への持ち帰りを認めた

ことなどが挙げられます。

これらは、事務方の原案を教育長がひっくり返したもの。

“端末はできる限り自由に使えるようにする”との自らの考えが貫徹されるよう、“どんな制限を掛けようとしているのか、1から100まで全部見せるように指示した”のだそうです。

 

【リスクを覚悟した】

制限がほとんどかかっていない端末を自宅に持ち帰ることが出来る、ということは、当然端末の悪用に関するリスクを伴います。

“制限ゼロから始める方針は、カルチャーショックだった”と事業を受託した民間事業者も口にするくらい画期的なことでした。

YouTubeを長時間視聴する子どもは熊本市の教育センターで把握し、個別に指導することにしましたが、これでリスクがゼロになるものではありません。

覚悟を決めた、ということだと思います。

 

さて、いかがでしょう?

明確なる方針とガバナンスの徹底が重要であることは論を待ちませんが。

最後の決め手は「虎穴の覚悟」。これだったのではないでしょうか。

 

「マリリンモンロー・ノーリターン ノーリスクもまたノーリターン」

 

一つ学ばせていただきました。

*参考文献
佐藤明彦「教育委員会が本気出したらスゴかった。 ―コロナ禍に2週間でオンライン授業を実現した熊本市の奇跡-」(2020)時事通信社

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