この週末は、お詫び会見に関するあれこれがありました。
【お詫びの鉄則】
「大川原化工機事件」における謝罪対応がなかなかのものでした。
一つは、「お名前」「社名」に関する誤り。
ニュースの映像を見ると、メモなどを眺めることなくお詫びの言葉を述べていましたから、原稿を暗記して臨んだのでしょうけど…
結果的に、失礼を重ねる結果となってしまいました。
これはお詫びに限りません。
式典の挨拶であれ、表彰状の交付であれ、辞令の交付であれ。
お相手のお名前や肩書を間違えることなど、努々あってはなりません。
現役時代、私は、必ず事前に音読してから本番に臨んでいました。
このお詫び対応がなかなかであることの第二は、お詫びに伺う者の人選。
過去の冤罪事件では、県警本部長や検事正など「組織のトップ」が謝罪することが多かったのですが、今回は、警視庁副総監と地検の公安部長が訪れました。
「格下」の者による対応となりましたが、その理由はと言うと…
「片方がトップでないのに、もう片方がトップという訳にはいかない」
という趣旨のコメントを記事で読みました。
「ウチもトップを出しますから、そちらもトップで」
と交渉するのが本筋でありましょう。
本気でお詫びする気持ちが無いのだな、と感じました。
【お詫びの顔つき】
国士舘大柔道部員の大麻使用疑いについてのお詫び会見もありました。
学長が「深くおわび申し上げる」と謝罪し、全国大会の出場辞退など当面の対応が示されました。
個人的に気になったのは、会見における学長の顔つき。
どうにも穏やかで、どこか他人事と感じているかのような印象すら受けました。
こういう時は、敢えて厳しい表情を作った方がいいと思っています。
もう四半世紀前になりますが、リーマンショックの影響でガス事業の民営化がとん挫した際の対応です。
あの時は、先方が公募手続きからの「辞退届」を仙台市に対して提出する、という話になり、テレビカメラが入ることとなりました。
担当課長であった私が受理したのですが、厳しい表情を作るように意識した記憶があります。
後日、その時の様子をニュースで視聴した先輩から、「厳しい表情でよかったぞ!」と声がけされ、やはり正解だったな…と感じた経験があります。
【お答えしないなら】
タレントのコンプライアンス違反に関する日テレ社長の会見は酷いものでした。
プライバシーの保護を理由に何も答えなかったのです。
「一体何のための会見なのか!」
と怒号が飛び交う事態となりました。
この案件は、後に日テレによるお詫び会見が必要となった場合、重要な布石になるのでは、と感じています。
仮に、ということですが、当該タレントからのコンプライアンス違反行為が、日テレ社員に対して行われていたとしたらどうでしょう?
会社として違反行為を把握していたのか?
当該タレントの違反行為に対して組織としてどう対応したのか?
社員に対してどのようなフォローをしたのか?
先のフジテレビの事案と全く同じ図式が浮かび上がってくるではありませんか。
ですから、「いつ把握したのか?」という問いかけに対して、「5月27日」と答えたことは、後に重大な意味を持ってくるような気がします。
万一、相当前から違反行為があった場合、「長年にわたって組織的な対応が取れなかった」とか「上司は知っていたが、組織としての共有に至らなかった」とか。
こういった話に及んでくる可能性がゼロではないと感じます。
プライバシー保護を理由にコメントを出さなかったことについて。
識者のコメントを読むと、被害者と示談に至っていないとか、被害者が公表を望んでいない、などの状況があるのであれば、日テレの対応は止むを得ない、という論調が多かったようです。
でも、それがどういう状況をもたらすかは、あまりに自明です。
私が日テレの社員だったら、
「弊社が一番手になることは絶対に避けるべき」
と強く意見具申したと思います。
この会見のテーマは、タレントの活動休止であり、本来は所属事務所が主宰すべきものです。
私が日テレの社員ならば、
- まずは当該所属事務所が会見を開いて活動休止を発表する
- その中で、事案の詳細については、プライバシー保護を理由にコメント出来ない旨を明らかにしてもらう
- これを受ける形で日テレが会見し、番組からの降板などの対応を取ることを速やかに公表する
- 事案の内容については、所属事務所からの要請があり、お答えできない旨コメントする
という案を立てたと思いますー