20年ほど前になりますが、赤坂の高名な寿司店にお邪魔した時の話です。
名人と謳われる親方は威厳満点。
誰もいないお店にお邪魔した私は、やや緊張しながらお盆の上の白い布巾に手を伸ばします。
「おしぼりは別にお出ししますから…」
と、早速親方から軽いジャブ。
この方は握りの早いことで有名で、お昼のお決まりを頼むとパパパと食べ手のスピードに関係なく握りを出してくるのだそうです。
そうした事前情報を入手していた私は、ヒラメの握りをすかさずパクリ。
昔ながらの大ぶりの握りでしたが、こちらもそれなりに年季が入っているので親方の握りの速度に負けません。
パクパクパクと出された握りをいただいていくと、
(おやっ?)
という驚きの気配を感じましたね。ジャブにはジャブでお返しです。
冒頭に登場した白い布巾はお鮨をいただく際、手についた煮切り醤油をふき取るためのもの。
煮切り醤油はお店ごとに工夫がしてあって、これを用意してあることが心ある名店の証と巷では受け止められているのです。
外れてはいないのですが当たりでもないなぁ…と私は思っています。
ポイントは煮切りの量。ネタに煮切りを刷毛で塗るのですが、大概のお店は塗り過ぎ。
握りを放り込むと煮切りの味で口の中が一杯になってしまい、どのネタを食べても同じ調子のお鮨になってしまいます。
浅草のとある名店では小僧さんが煮切りを塗る役目だったのですが、これでもか!とばかりに煮切りを塗りたくります。
まぁジャブジャブの状態でした…
私の好みで言うとチョンと塗るくらいで十分。
小肌や鯖などの〆ものでは無くてもいいくらいです。
本稿は、仕事との関わりで申し上げると「過ぎたるは…」ということでありましょう。
丁寧な仕事を心がけることはよいことですし、対応に万全を期すことも大切です。
でも、私の感覚では3割引きしても大丈夫なのになぁ…という事案も時々見かけました。
この際、少し大胆に合格ラインすれすれを狙ってみてはどうでしょうか?