監査委員を2年間務めましたが、監査における指摘事項には「常連」があるのだな…と気づきました。
一つは、決裁区分の誤り。物品の購入や委託業務の発注、工事請負契約の締結などにおいてよく見かけます。
業務委託契約における再委託の手続きの失念も多かったです。公の施設の管理委託業務に顕著で、年央に突発的な再委託業務が発生すると危うくなります。
そして、随意契約要件の適用の誤り。
中でも筋悪なのが「分割発注」。随意契約の金額に収まるよう物品の購入や工事の発注を2回に分割するケースです。
もはや確信犯の案件と言えましょう。
仙台市役所の場合、定例監査に入るとどこかしらの部署でこの分割発注が見つかります。
過去10年間の記録を眺めてみると、およそ改善の気配がありませんでした。
まぁ、担当部署としても「止むに止まれず」ということだろうとは思います。
件数で言えば、年間数件といったところでした。
(見つかっていない案件はさらにあるのでしょうけど。)
しかし、大阪府豊中市の事案にはびっくりしました。
工事の請負契約において、過去5年間で353件、3億1千万円もの分割発注があった、というのです。
中には、一つの工事を34件に分割していたものまでありました。
「緊急対応のため」と説明する職員が多かったのだそうですが…
「上には上があるものだ…」
と変なところで感心していたら、さらにその上を行く自治体がありました。
東京都江戸川区です。
こちらは過去5年間で何と1642件!
多くは学校施設における工事請負契約で発生していました。
この自治体では、いわゆる三社見積の手続きも不適切で、一社決め打ちで工事を発注し、工事終了後に他の二社から形式的に見積書を徴する、という進め方がありました。
酷い場合だと、工事を発注した一社が後から他社分の見積書を持参した、というケースまでありました。
第三者委員会の調査報告書を読みましたが、この事案の「話の根っこ」は根深いものがあります。
敢えて一言で申せば、「組織としてのガバナンスの不存在」ということだろうと思います。
必要とされる業務量に対して圧倒的に人員やスキルが不足しており、それを組織として適切にマネジメント出来ていなかった。
マネジメントすべき人物。学校施設に関しては、形式的には教育長ということになるのでしょうけど。
区役所全体としての定数管理の問題や契約事務の総括という観点からは、区長に最終責任があるように感じます。
もとより特別区の区長は公選制であり、区長は政治家ですから、然るべき立場の方が実務における最終責任を担うべきです。
多分、その部分が上手く機能していなかったのでしょう。
どこかの市役所みたいだなーと思いながら、報告書を読みました。
*参考文献
公共工事の分割随意契約で不適切、5年間で353件3・1億円分…大阪・豊中市. 読売新聞. 2025-10-11,読売新聞オンライン, https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20251011-OYO1T50036/, (参照2025-10-12)
「法令違反もやむを得ない」長年の不適切な認識…江戸川区の分割発注問題 白紙の見積書を業者間で融通か?. 東京新聞. 2025-10-17,東京新聞デジタル, https://www.tokyo-np.co.jp/article/443276, (参照2025-10-27)

