「この仕事は私にしか出来ない!」
若い時分、こう豪語する先輩に接し、内心舌を巻いた記憶があります。
その後の市役所人生でも、同様の言葉を口にするお方を何人かお見かけしました。
が、30数年を経ての私の結論は、
「その人にしか出来ない仕事など、そう滅多にありはしない」
このことであります。
新型コロナの感染が爆発的に拡大。
私の職場でも何人かが感染あるいは濃厚接触で療養・自宅待機となっています。
それぞれご自分の業務を抱えておられ、ある方など、職場にご迷惑をお掛けして…と大変な気になさりよう。
しかし、私の職場や自治体における業務は「組織のお仕事」であります。
誤解無きようと前置きしつつ、敢えて申し上げますが、組織のお仕事は何とかなるものなのです。
タイトルの諺に倣えば、
「担当者が不在でも仕事は回る」
このことであり、ご自身やご家族のことを第一に…と心から思います。
私の失敗談ですが、若手職員の端くれとして財政課に在籍した当時、市債という市役所の借金を返済する業務をすっかり忘れて、丸一日休暇をいただいてしまったことがあります。
借入日が様々なので、これに呼応して償還日も様々。
万一の返済漏れが無いよう入念にチェックしていたつもりでしたが…
休暇をいただいた翌日、出勤すると職場の空気感が微妙でした。
生来鈍感なのですが、その私が感じるほど微妙な空気だったのです。
しばらくして、事の顛末を教えていただきましたが、担当者不在の中、指定金融機関からの連絡で返済漏れ寸前であることが発覚。
先輩たちが何とか対応してくださったものの、それはもう大変な騒動になったのだそうです。
何ともお恥ずかしい話ではありますが、ある意味、「組織のお仕事」の本質を表している事例ではありましょう。
念のため申し添えますが、私は、担当者のスペシャリティを否定するものではありません。
「この人ならではの仕事」
というものは、厳然と存在するのです。
その一方、「私にしか出来ない!」と口にするお方ほど、実は…
ということも少なからず経験しました。
かく申す私も、仙台市政の懸案であるアノ件やソノ件など「私ならば…」などと考えてしまう不心得者ですが。まぁ、そんなことを口にする人ほど、大したことないのであります。
まさに、このことでありましょう。