失敗をやらかした時、「無かったことにできないか?」と悪魔の囁きが脳裏に浮かんだことはありませんか?
絶対に耳を貸してはいけません。甘い囁きに迂闊に乗ってしまうと…
養子縁組した女性を保険金目当てで殺害した疑いで逮捕・拘留されていた容疑者が留置場で自殺してしまった案件。
被疑者を死亡させてしまうという重大な不始末です。
が、当初の説明は「巡回を強化していた」「自殺を疑わせるものは無かった」などといった調子でした。
報道があった当初から、何か変だな…とは感じていましたが…
実は、担当部署は、自殺を決意した家族宛てのメモを事前に把握していました。
つまり、自殺の可能性が相当高いことを承知していながら、みすみすそれを許してしまったのです。リンク(読売新聞オンライン)
これはもちろん重大な失態です。
被疑者死亡の場合、刑事責任を問えなくなり、それまでの捜査に投入された全ての労苦が水泡に帰すのだそうです。
ですが、そうであるからこそ、ペナルティーを覚悟した上で、真実をきちんと組織共有すべきでした。
私のOJTのお題に「人生二択論」というものがあります。
人生の岐路は、ある日突然目の前に現れるものですが、仕事における「運命の分かれ道」も同様。
ポイントが訪れたことを鋭敏に覚知し、「心のギア」を一段上げて決断すべし、という内容です。
本事案では、失態をあるがままに報告するかしないか。そこが重大な分かれ道でした。
しかし、正しい道を選ぶことが出来なかったため、今度は「話のつじつま」を合わせる必要が生じてしまいました。
本人の「遺書」の存在が明らかとなり、そのことに何時気が付いたのか?ということに説明を求められる羽目に陥ったからです。
ここもまた「運命の分かれ道」でしたが、結果は、嘘に嘘を重ねる最悪の選択となりました。
唯一の救いは、重ねての嘘に対して身内から「それは違うぞ」と声が上がったことでしょうか。
本事案は、警察という組織に固有の事情に由来するものではありません。
官民を問わず、どの組織でも起こり得る、どなたに対しても訪れ得る、そうした性質の事案だと思います。
「失敗した時ほど、危機管理の原理原則に忠実に」
まさに、このことでありましょう。