「麦味噌」を「味噌」と名乗ることはまかりならん、との行政指導が撤回された事案。リンク1(毎日新聞デジタル) リンク2(同)
虎の巻的には2点ポイントがあります。
第一は、これまでの対応との整合性はどうか?という視点です。
この商品は、かれこれ半世紀以上にわたって製造・販売されています。
この間、行政からの指導は無かったとのこと。
すると、今まではOKだけど、今後はNGという話になってしまいますが…
行政において対応を変更する際の極意は、
「これまでも正しくて、これからも正しい」
このことであります。
この双方についてロジックを組み立てられなければ、素直に「今までが間違いでした」と白旗を掲げなければなりません。
そうしたケースも全く無い訳ではありませんが、実務的にはあり得ません。
第二は、話をどこまで上げて意思決定するか、という観点です。
この件では、県の地方局長名で文書が発出されています。
これは私の推察ですが、当初の指導に際して、知事の判断を仰ぐことなど無かったのだろうと思います。
しかし、「味噌禁止」の指導は各マスコミに大きく取り上げられます。
おそらく、知事を含め、県の上層部は、この時点で事の成り行きを承知した…そんな感じがします。
つまり、事案の重大性の評価を結果的に誤ってしまった、ということだと思います。
私の区長経験に照らすと、いわゆる指導行政に携わる職員は法令等のルールを大変厳格に守ろうとします。
これはこれで正しいのですが、
「物事の評価軸は、法令等のルールだけではない」
このことでもあるのです。
一つには、冒頭申し上げた行政指導の整合性の確保という軸があるでしょう。
半世紀以上にわたって販売されてきた地元ならではの品であれば、地域にとってのブランドの一つであり、それを無くしてよいのか、という議論もあります。
生々しい話で恐縮ですが、仮に議会で取り上げられた場合でも持ちこたえられるか、という点も実務上は重要です。
「これまでも正しかった」という点についてのロジックを組み立てた上で、組織の上層部と事案を共有していれば、おそらくは、次のような結論に至ったのでは、と思います。
「今までもよかったのだから、これからもこれでよい」
まさに、このことでありましょう。