再発防止策を講ずるにあたっては、「具体的であること」が先ずもって重要ですが、同時に「話の根っこ」に向けての対策であることも大切です。
石巻市が公表した再発防止対策の報告書を読んで、私なりに「話の根っこ」を考えてみました。
報告書の中から、私がポイントと感じた箇所を引用します。
”下水道建設課へ配属時に、「進捗が思わしくない雨水事業を軌道に乗せ早期の完成を図ってほし い」と上司からの指示だけでなく同僚からも言われた。また、毎年発生する大雨や令和元年の台風19 号被害も重なって、市内の雨水・冠水被害を早期に解消しなければならないプレッシャーや焦りがあった。”
”各所の工事と並行して早期に終わらせる必要があるため、係長と相談して工事を円滑に進めるため遠藤興業に受注させる方針とし、遠藤興業においても受注する意思があったことから、現場事務所で設計図書を渡し、価格を漏洩した。”
つまり、元職員2人は、仕事を円滑に進めるために不正行為を働いてしまったのです。
金銭の授受もありませんでした。
これは、大変に不幸な事件であったと感じます。
さて、本件の「話の根っこ」は、どこにあるのでしょうか?
私なりの答えは、
「組織力が働いていなかったこと」
これであります。
報告書から浮かび上がってくるのは、組織として仕事を進めているはずなのに、個人として懸案を抱え込んでしまっている、という図式です。
虎の巻の視点から申せば、改善すべきは「業務の進捗管理のあり方」だと思います。
「ちゃんとやっとけよー」とか「よろしく頼んだぞー」とか。
どこの職場でも時折見かける光景ですが、厳しく申せば、これらは上司としての役割を放棄しているようなものです。
当該自治体でどのような進捗管理が行われていたのかは分かりませんが、入札不調などで工事が遅延したとしても、それを個人の責任に帰すべきではありません。
管理監督する立場にある者が積極的に関り、組織として仕事の責任を考えていく仕組みが必要です。
これは、別に難しいことではありません。
週に一度、管理監督職にある者が部下から仕事の進捗状況を聞き取りすればいいだけなのです。
「そうか、入札が不調に終わってしまったか。じゃあ、次回の入札に向けて一緒に作戦を考えよう。」
「工事が遅れるかもしれないが、議会や市民へのご説明は私がやるから心配するな。仕事の殿(しんがり)を務めるのが上司の役割だからさ。」
こういう会話があれば、あるいは不幸な事件は起こらなかったのかもしれません。