ほんやくコンニャクの達人

仕事術あれこれ
写真提供:宮城県観光戦略課

分かりやすい説明の極意は、相手の立場に立った「意訳」を心掛けることだと思います。

最近、その好例と言ってよい本を見つけたのでご紹介します。

 

「いい国(1192)つくろう鎌倉幕府」

などと50年近く前にせっせと暗記したものですが、そもそも、「幕府を開く」とはいかなることか?

歴史の教科書には「源頼朝が征夷大将軍に任ぜられ、幕府を開いた」などとありましたね!

学校の先生はそれ以上のことを教えてくれませんでしたから、私など、武家屋敷のようなものを頼朝が構えて、そこで政治を執り行っているようなイメージを勝手に抱いておりました。

 

「承久の乱 日本史のターニングポイント」(本郷和人著)という歴史書は、そこら辺を実に分かりやすく教えてくれます。

冒頭の記述からして目から鱗。

“源頼朝もその家来も…(略)…誰一人として「鎌倉幕府」というものが生まれた、とは考えていませんでした”

幕府という呼称が用いられるようになったのは明治時代のことなのだそうです。

つまり、頼朝が幕府を開いたのではなく、後年、学者がこの時代の政治体制のことを「鎌倉幕府」と呼称するようになった、ということなのだと思います。

 

では、鎌倉幕府とは何か?

著者は、 “源頼朝とその仲間たち”という言葉でその本質を説きます。

私なりに理解したところでは、次のような話です。

・源頼朝を親玉にして周辺の武士が結集。

・頼朝と主従関係を結ぶことにより、頼朝が領地の安全を保障。

・万一領地に争いごとが発生した場合は、頼朝の呼びかけに各武士が参集。武力によって争いごとを解決する。

江戸幕府のようなカチッとした政治体制ではなく、源頼朝との主従関係に基づく集団的な安全保障体制みたいなものと理解をいたしました。

 

本書が素晴らしいのは次の2点。いずれも、私たちの仕事において参考とすべきことです。

第一に、歴史書としての厳密さよりも、読者の理解に重きを置いていること。

いわゆる学者さんが書く書物は、学術的には正しいのですが用語を含め難解。本書のようなアプローチにはなかなかお目にかかりません。

ですが、自治体職員の住民の方々へのご説明にも、これと似たような傾向はありませんか?

法令上の用語は市民の方々には馴染みづらいものです。

概ねのところが正しいのであれば問題ありません。

市民目線での意訳、言い換えにチャレンジしてみてはいかがでしょう?

 

第二の美点は、「ズバリ一言」での表現を心掛けていること。

たくさん説明を加えていくと正確性は増すかもしれませんが、同時に分かりにくくもなっていきます。

市民本位でのご説明を志向するのであれば、言葉を選び抜きシンプルな表現を目指していきたいものです。

理想は「漢字二文字」。まぁ、これはなかなか上手くいきません…

 

私なりの訓練法ですが、ニュースを読んだ時など、「詰まるところこれは一体どういうお題になるのか?」と考えるようにしています。

例えば、安部元首相銃撃事件であれば、これは「仕事のスイッチ」というお題になるのではないか?などと思考しております。

詳しくは次週。

 

*参考文献
本郷和人「承久の乱 日本史のターニングポイント」(2019年)文藝春秋

 

おやじネタについてのささやかな解説

【ほんやくコンニャク】
は、ドラえもんの便利アイテム。これを食べるとどんな言語も自由自在というもの。

大学受験の時にあったら有難かった…

藤子・F・不二雄先生がお亡くなりになって四半世紀になりますが、ドラえもんの人気は健在。

でも、連載当初は不人気で、先生はずい分とお悩みだったのだそうです。

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